「ハダカデバネズミ」

ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係 (岩波科学ライブラリー 生きもの)

ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係 (岩波科学ライブラリー 生きもの)



ハダカデバネズミは哺乳類で最初に発見された真社会性動物として有名だ.私は1980年代の終わり頃,日経サイエンスか何かの記事を読んで知ったわけだが,大変興味を持ったことを思い出す.しかし日本ではなかなか実物を見る機会もなく,偶然1994年にニューヨークのブロンクス動物園を訪れる機会があり,そこで見かけて非常に感激したのもなつかしい.


さて本書はジュウシマツのさえずりと言語のリサーチで有名な岡ノ谷先生がお弟子さんの吉田重人さんとの共著でハダカデバネズミを紹介するもの.この真社会性動物が世に知られるようになったきっかけ,千葉大学ハダカデバネズミを飼育し始める経緯,その苦労話(シカゴの空港のネズミ嫌いの受付嬢の話は笑えるし,千葉大の学園祭のロックバンドの大音響で飼い始めたばかりのハダカデバネスミ達が情緒不安定になって殺し合うくだりなどもある),さらにその興味深い生態が紹介されている.


もちろん真社会性の生態は大変面白いもので,肉ぶとん階級だとか,分散の様子なども含めなかなか楽しい.しかしそれ以外のこの動物の生態はあまりまとまって紹介されることもなく,知られていないことも多いと思われるが,本書ではこの動物の様々な側面が丁寧に紹介されている.門歯の状態や,生理的な特異性(この動物は哺乳類にもかかわらず事実上変温動物であり,寿命も非常に長いらしい)などは大変興味深かった.
また上野動物園に行ってハダカデバネズミたちにあってくることにしよう.