- 作者: チャールズ・ロバートダーウィン,Charles Robert Darwin,長谷川真理子
- 出版社/メーカー: 文一総合出版
- 発売日: 2000/02
- メディア: 単行本
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The Descent of Man (New Editions)
- 作者: Charles Darwin,Richard Dawkins
- 出版社/メーカー: Gibson Square Books Ltd
- 発売日: 2003/02/06
- メディア: ペーパーバック
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第12章 魚類,両生類,爬虫類における第二次性徴
本命の鳥類へいくまでのインターミッションのような章だ.ダーウィンはしかし丁寧に様々な動物群に見られる現象を紹介している.いかにも博物学的で肩の力も抜けて楽しそうだ.
<魚類>
- サメ・エイにはオスに把握器官があるものがいる.
- トゲウオはオスが巣を作り求愛する.オス同士のけんかも激しい.
- サケもオスはけんか好きである.オスは繁殖期にはいわゆる「鼻曲がり」の特徴的な顔になるものがある.これは武器ではないかとダーウィンはコメントしている.
ダーウィンはオスがけんか好きのものが多い割には魚のほとんどでメスの方が多いのは不思議だ,恐らく卵数が多いことが重要なのだろうとコメントしている.
鮮やかさについてはオスのみ鮮やかなものが多く,その中には繁殖期だけのものもあるとし,トゲウオやサケの例を示している.
面白いのは両性とも鮮やかな魚についての説明だ.ウォーレスは保護色だとしているが,そうとは考えられないものもあるとダーウィンは指摘し,まずい魚というのは聞いたことがないから警告色でもないだろう,捕食者につかまるためという創造論的な説明(1870年代という時期でもまだこのような主張があったらしい)はあり得ないので,性淘汰形質がメスにも現れているのではないかとコメントしている.確かにオスメスともに鮮やかな模様の魚は珊瑚礁などにたくさんいるように思われる.これには保護色以外の説明があるのだろうか.考えてみると面白いかもしれない.
またダーウィンは,小さいオスがより鮮やかであることについて,これはウォーレスの「メスが保護を要するから保護色」という説明の反例ではないかと指摘している.
<両生類>
- サンショウウオ・イモリには性的二型がある.一部にはオスのみ把握器官,メスを探すためにオスのみ水かきがあるものがある.繁殖期にオスに色がつき,背びれが派手になるものもいる.
- カエル.多くの種に保護色,警告色とみられる鮮やかな色がある.形態の性差はあまりない.しかし音声は非常に豊かで,通常オスのみ鳴く.これは強い性淘汰形質とみられる.
<爬虫類>
- カメにはあまり性差はない.ドロガメの爪に一部性差がある.リクガメはオスメスで大きさが異なるものがある.
- ワニにもあまり性差はみられない.オスが激しく争うという報告がある.
- ヘビにもあまり性差はない.一部匂いによる求愛があると報告されている.いくつかの種で鮮やかな色がある.ダーウィンは同じ地域で有毒のヘビと近縁の無毒のヘビが似たような鮮やかな模様をしていることについて,無毒のヘビは擬態だろうが,有毒のヘビはあまりに美しいので性淘汰形質としか思えないと述べている.ここはダーウィンには珍しく説得力がないところだ.なぜ有毒のヘビの色調が警告色でないと考えるのだろうか.「美しさ」にとらわれてしまったためなのだろうか.
- トカゲにはいくつか性淘汰形質がみられる.アノールトカゲはオス同士が激しく争う.オスは背中のヒレや喉袋が発達し繁殖期には鮮やかな色をしている.オスの鼻の先にツノのようなものを発達させるトカゲ,カメレオンがいる.
トカゲのオスメスで鮮やかさが異なることについて,抱卵しないのだからやはりウォーレスの「メスが保護を要する」という説明は妥当しにくいだろうとコメントしている.ウォーレス説についてダーウィンは相当気にしていることがよくわかる.