「解明される宗教」

解明される宗教 進化論的アプローチ

解明される宗教 進化論的アプローチ


以前私が書評したダニエル・デネットの「Breaking the Spell」の邦訳が「解明される宗教」という題で出版された.
この本は,パスカル・ボイヤーの「Religion Explained」(邦題「神はなぜいるのか?」)やスコット・アトランの「In Gods We Trust」などの宗教を進化的に説明しようとした試みの流れを受けて出版されたもので,宗教を非常に巧妙な適応的な特徴(「信仰の信仰」,不可解な教理,管理者の存在など)を持つミーム複合体として説明した上で,それが人にとって有用かどうかを議論しているものだ.(当面の結論としては,「人にとって有用であるとは限らないのでリサーチが重要だ.少なくとも子供への無条件の洗脳の権利を親に認めるべきではないのではないか」というものになっている)またドーキンスの「The God Delusion」(邦題「神は妄想である」)は本書の後の出版になっている
デネットは非常に誠実で明晰な議論を繰り広げており読んでいて大変啓発的だ.(これに比べるとグールドやコンウェイ=モリスの議論が,結論の是非は別にしても,いかに粗雑かがよくわかる)


私の原書の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20070218,読書ノートはhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20061023以降に掲載している.



原書

Breaking the Spell: Religion as a Natural Phenomenon

Breaking the Spell: Religion as a Natural Phenomenon


これに先立つボイヤーの本.この題名が「解明される宗教」になっているのは,「解明される意識」を出版しているデネットへのオマージュなのかもしれない.この本の邦題は「神はなぜいるのか?」そう考えると今回のデネット本の邦題はなかなか興味深い.

Religion Explained: The Evolutionary Origins of Religious Thought

Religion Explained: The Evolutionary Origins of Religious Thought


邦訳 私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20080505

神はなぜいるのか? (叢書コムニス 6)

神はなぜいるのか? (叢書コムニス 6)



同じくアトラン本.これはまだ邦訳されていない.

In Gods We Trust: The Evolutionary Landscape Of Religion (Evolution and Cognition Series)

In Gods We Trust: The Evolutionary Landscape Of Religion (Evolution and Cognition Series)



これらの本の議論の後に出版されたのがドーキンス本だ.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20070221,読書ノートはhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20061201以降にある.

The God Delusion

The God Delusion

神は妄想である―宗教との決別

神は妄想である―宗教との決別