The Better Angels of Our Nature: Why Violence Has Declined
- 作者: Steven Pinker
- 出版社/メーカー: Viking
- 発売日: 2011/10/04
- メディア: ハードカバー
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1400年以降のヨーロッパの戦争の軌跡は複雑だ．ピンカーはこれは統計的な傾向というより個別の物語の世界だと前置きして解説を行う．そしてピンカーによるとこれは4つの成分の合成の結果ということになる
＜ホッブス的なバックグラウンドと5つの時代＞
ヨーロッパの中世から近世にかけては絶え間ない戦争の歴史だ．ここ1000年間に平均して年に2つの戦争があった．
そして争いはホッブス的なものが基本になる．
- 補食的な利益：特に土地とそこから上がる収益
- 威嚇：やられる前の先制攻撃
- 名誉：復讐
次にピンカーは物語的解説を行う．これらは歴史家や政治学者たち（デイヴィッド・ベル，ニアル・ファーガソン，マイケル・ハワード，ジョン・キーガン，エヴァン・ルアード，ジョン・ミュラー，ジェイムズ・ペイン，ジェイムズ・シーハン）の意見を参考にしたもので，次の5つの時代区分はエヴァン・ルアードによる説明だ．
《王朝の時代：1400-1559》
王朝は基本的に血縁により継承された．ピンカーはこれは包括適応度的に理解しやすいとコメントしている．ただしヒトの本性が戦争の動機にひねりを加える．ピンカーのあげる「ひねり」はなかなか面白い．これらは数多くの「継承戦争」を説明する．
- 幼い時には無力，父が早く死ぬことがある
- 遺伝は完全ではなく平均に回帰する．父王のように偉大にはなれない
- 血縁には父方と母方がある．
- 性的二型，女性は男性ほど征服欲がない．
- 一夫多妻性：多くの庶子が存在する
- 複数子：親子コンフリクト，兄弟の競争
- 血縁びいき
《宗教の時代：1559-1648》
この90年間は宗教の各派（プロテスタントとカトリック，カトリックとギリシア正教，キリストとイスラム，スンニとシーア）が都市や国家のコントロールを争った時代ということになる．そしてこの時代はマスケット銃，パイク，大砲などの軍事技術が進展した．
背景となる動機は宗教心であり，相手を許さず苛烈になりがちだった．
《主権国家の時代：1648-1789》
1648年のウェストファリア条約でヨーロッパは主権国家の時代に入る．そしてそれまでの教皇と神聖ローマ皇帝まで遡る複雑なキルトから主権国家により区切られるわかりやすい形になる．この時代には戦争頻度が下がり激しさが増した．
- 頻度が下がったのは戦う主体が500から30に整理されたからだ．またその主権国家のリバイアサン（文明化プロセス）の効果で30の地域内の内戦は減った．
- 軍事革命：この時代に軍事技術はさらに進んだ．そして傭兵から市民軍，常備軍に変わり，ナポレオンの劇的な勝利を可能にした．
- 一部の国は覇権争いから降りて商業立国を目指すようになった．：オランダ，スエーデン，デンマーク，ポルトガル，スペイン
- 理性の時代の影響：征服より，ノンゼロサム的な解決を好むようになり，また人々は戦争を非難するようになった．
ナポレオン戦争は4百万人を殺した．
その後，大帝国からの独立戦争が相次いだ．：ベルギー，ギリシア，ブルガリア，アルバニア，セルビア，そしてイタリア統一，ドイツ統一
また片方で帝国はアジア，アフリカで植民地化を進めた．
そして第一次世界大戦はこのようなナショナリズムの頂点とも言える．それはセルビアの独立運動として始まり，最終的にハプスブルグオーストリア帝国とオスマントルコ帝国の解体につながった．
《イデオロギーの時代：1917-》
ロシア革命以降世界は，民主主義，共産主義，ファシズムの争いとなった．
ルアードの整理は王朝・宗教・主権国家・反啓蒙主義とナショナリズム・イデオロギーという分け方だが，これ以外の見方もあるだろう．ピンカーは別の整理も紹介している．
関連書籍
ルアードの本．
- 作者: Evan Luard
- 出版社/メーカー: I.B.Tauris
- 発売日: 1986/12/31
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