「The World Until Yesterday」 第7章 コンストラクティブパラノイア その2 

The World Until Yesterday: What Can We Learn from Traditional Societies?

The World Until Yesterday: What Can We Learn from Traditional Societies?


伝統社会の人がある種のリスクについて非常に警戒的であることをダイアモンドは自らの体験例を出して説明してくれた.しかしもちろん彼等はリスクをすべて避けるわけではない.人生にはあえてリスクを取った方が良いときもあるのだ.


<リスクをとること>


ダイアモンドはグレツキーの言葉を最初に引用している.難しいシュートを打つことについて聞かれた彼は「100% of the shots you don't take don't go in.(シュートを打たなきゃ点は入らないよ)」と答えたそうだ.リターンがあるならリスクは取るに値することがあるのだ.

そして実際に伝統社会の人がリスクを取る例をいくつか紹介している.

  • クンのハンター:毒矢に当たり,長距離走った後に倒れた獲物はライオンやハイエナが先に見つけることが多い.彼等は小さな弓矢しか持たずにそれらを追い払う.ただしライオンの腹が膨れているかどうかはよく見る.
  • ニューギニアのフォアの女性:他部族に嫁いだ後親元に帰ることはほかの村落を通るのであれば危険だ.しかしそれを恐れては二度と両親に会えない.通過する村の親戚の男に保護を頼んで出かける.実際にそれで直前に殺人があって復讐のためにレイプして殺されたケースがある.(頼まれた男は多勢に無勢で脅されたし,復讐にも正義があるのでどうしようもなかった)
  • イヌイットのアザラシ猟:氷のアザラシ穴で長時間待ち伏せる.突然氷が岸から離れて帰れなくなるリスクがある.しかしこれをしないと餓死してしまうので彼等はリスクをとる.


<リスクと話好き>


ダイアモンドによると伝統社会の人々は話し好きだ.彼らはある物事について延々と,あるいは誰がいつどこでなにをしたかを始終話している.夜中も目が覚めるたびに話す.
ダイアモンドはここで面白いコメントをしている.彼等のリスクへの態度と彼等のしゃべり好きには関係があるというのだ.


推測されるゴシップの機能

  • 娯楽:彼等にはテレビも本もない
  • 社会関係の形成,維持
  • リスク評価のための情報源.伝統社会ではこれは自分の体験と会話しかないのだ.


そしてダイアモンドは現代社会においてもゴシップでしか得られないようなリスク情報がある場合もあるだろうと指摘し,いい男に巡り会うために失敗を繰り返しながら女友達と始終情報交換を行ったあるシングルマザーの話を紹介している.これはダイアモンドによる伝統社会から得られるリスクに関する教訓その2ということだろう.