Virtue Signaling その14


Virtue Signaling: Essays on Darwinian Politics & Free Speech (English Edition)

Virtue Signaling: Essays on Darwinian Politics & Free Speech (English Edition)

  • 作者:Geoffrey Miller
  • 出版社/メーカー: Cambrian Moon
  • 発売日: 2019/09/17
  • メディア: Kindle版
 

第4エッセイ 道徳的徳の性淘汰 その10

 
ミラーによるモデルの予測リストはさらに続く.
 

<表現型的特徴> (続き)

 

特徴6 様々な悪徳の共存性,発達的不安定性,脳の異常

 

  • もし異なる悪徳が有害な多面発現突然変異によりオーバーラップして発現するものなら,悪徳同士は性の遺伝的相関を持つだろう.また悪徳が神経発達を乱すような突然変異によるなら,それ以外の様々な適応度を下げる精神異常と一緒に見られるだろう.

 

特徴7 特徴の分散は男性の方が大きい

 

  • 一夫多妻的配偶システム,婚外交尾のあるシステムで進化した生物はオスの方が形質や繁殖成功の分散が大きくなり,オスの方がリスク受容的に進化する.
  • このことから男性の方によりスーパーな道徳性を持つ個体(ガンジーやキング牧師など)が多く,同時に極めて悪徳な個体(ドラキュラ,スターリンなど)も多いことが予測される.
  • (このようなスーパー特性を持つ男性が多くの女性と関係を持っている傾向は,このモデルの正しさを示しているのであって,彼等が非道徳的であることを示しているわけではない)

 

特徴8 若いときにディプレイのピークがある.

 

  • 性淘汰を受ける行動として徳ディスプレイも繁殖努力のピークである若いときにピークを見せるだろう.思春期前には少なく,その後急速に増加し,時間とエネルギー投資がコートシップから子育てに移行するにつれて緩やかに減っていくだろう.

 

特徴9 代替的配偶戦略

 

  • 性的に魅力的な道徳的徳に欠ける個体は(異性の配偶選択や同性の配偶者防衛をかいくぐるための)代替的戦略を採るだろう.これには短期的配偶戦略の繰り返し,騙しによる情事,セクハラ,ストーキング,そして強制的性交などが含まれる.
  • もしそうなら,徳に欠けもてない個体が最初に配偶マーケットで失敗し,やけっぱちの代替戦略を採用し,それによりさらに徳に欠けていくという忌まわしいサイクルがみられるだろう.
  • これは行動生態学者にとっては当然の予測だが,現在のフェミニストたちの支配的見解(レイプは家父長制暴力の犯罪である)とは非常に異なる見解を示しており,より優れたレイプ防止策につながるだろう.

 

<道徳的徳の配偶選択>

 

特徴10 配偶選好

 

  • 他の条件が同じなら道徳的徳は配偶選好される.そして単に観察されるだけでなく(様々な社会的性的状況をアレンジすることにより)能動的に探られるだろう.実際にこのような「徳テスト」は恋愛コメディの中心的プロットになっている.(恋人以外の女性からアプローチされたらどう反応するかなど)
  • さらに良い遺伝子インディケーターは短期的関係やペア外性交時により好まれるだろう.良い親,良いパートナーインディケーターはより長期的関係において好まれるだろう.

 

特徴11 同類配偶

 

  • ヒトは社会的モノガミー種であり,高い徳を持つ個体同士が選択し合い,残された次の個体同士が選択し合うという形でペアが形成されていく.これにより道徳的徳に関して同類配偶が観察されるだろう.

 

特徴12 性的貶しとゴシップ

 

  • もし徳が配偶選好において評価されるなら同性ライバルは相手の徳を互いに貶し合うだろう.そしてゴシップのテーマは道徳的性質に集中するだろう.徳目は賞賛され,悪徳は貶される.
  • さらに性的選択モデルはより詳細な予測をする.例えば短期的配偶関係を求めている男性は女性の非貞操性を(例えばfun, liberal, adventuousなどの婉曲表現で)道徳的徳のように扱うだろう.逆に長期的配偶関係を求めている男性は女性の貞操性を徳として扱うだろう.
  • そうすると賢い女性は短期的マーケットでは同性ライバルを「堅苦しい保守派」と貶し,長期的マーケットでは「淫乱な色情狂」と貶すだろう.

 
なかなか詳細で面白い.これらの予測はどこまでリサーチされているのだろうか.ミラーもコメントしておらず,あまり進んでいないのかもしれない.