From Darwin to Derrida その149

 

第12章 意味をなすこと(Making Sense) その14

 
いかにも興味深いツインメルマン電報の逸話を扱った後,意味についてのヘイグの議論が展開される.
 

相互的情報と意味

 

  • 「意味論的情報」という概念は,意味が解釈に先立って情報の中にあるということを前提にしている.この考え方では解釈者はすでにある意味を新しいメディアにリパッケージすることになる.
  • 私はこれに対して,意味は情報が入力となっている解釈過程の出力だと考えるべきだと提案したい.この考え方では意味の質問に対する解答は解釈メカニズムと解釈能力の起源に求められるべきものになる.いったんこれらの難問が答えられたなら,意味論にゴーストは残存しない.

 
意味が出力というのは直感的な理解には反するような気もするが,結局「意味」について何か問題が生じるのは,その出力についてだから,結局これでよいのかもしれない.いずれにせよ思いつきにくい着想だと感じられる.
 

  • 「意味論的情報」と「解釈としての意味」のどちらを使うかは,「意味」の定義によるべきで,事実の判断によるべきではない.「解釈としての意味」は,情報とは世界に実在する客観的な実体ではなく観測者の認識論的不確実性を表すものだという信念とうまくフィットする.

 
そして出力として「意味」を捉えると,情報は実体ではなく不確実性(の減少)だというシャノンの議論と整合的になるということになる.ここでツインメルマン電報に則して解説がある.
 

  • ツインメルマンからエッカルトへのメッセージの2つの変換を考えて見よう.最初の変換では,ツインメルマンの平文はコード7500の暗号文に変換された.2回目の変換では暗号文は電信局職員と送信機により電気信号に変換された.これらの変換が意図された通りに為されれば,この電文は受信機により受信され,コードブックを持つ解読者に復号されただろう.
  • ツインメルマン電報の伝達の信頼性は,数多くのコードシステムの中での「相互的情報」(統計的な依存性)に依存する.
  • 「意味論的情報」の支持者はしばしば意味と相互的情報と同一視するか,意味は相互的情報から生み出されると考える.彼等によれば,ツインメルマン電報の様々なテキストは,数多くの転換を通じて保存された共通の意味のヴィークルだということになる.
  • 「解釈としての意味」主張者の立場からいえば,相互的情報は観察を解釈に転換することを可能にするものだということになる.意味は観察にあるのではなく,世界の中で効果的に行動するための背景情報(文脈)と観察の解釈的統合にあるのだ.

 
そして直感的な「意味は解釈に先立って情報の中にある」という立場から見ると,ツインメルマン電報の様々な形(ドイツ語テキスト,暗号文,モールス信号など)は共通して同じ意味を持つことになる.そしてあるテキストと変換された別のテキストの相互的情報(統計的依存性)により,意味の共通性が保証されることになる.
これに対してヘイグの「意味とは出力だ」という立場をとると,相互的情報(統計的依存性)は(文脈とあわせて)解釈を可能にするものだということになる.いろいろ難解だ.