上野の森美術館で恐竜アートの展覧会があるというので行ってきた.
恐竜の絵は小学校のころによく読んだ恐竜図鑑が頭にたたき込まれているし,1980年代以降の恐竜ルネサンスからジュラシックパーク以降の新しい復元像にも思い入れが深い.考えてみればこのような新しい復元像が巷に出回り始めてからもう40年も経っているというわけだ.
本展覧会は4部構成で第1部が「恐竜誕生:黎明期の奇妙な怪物たち」第2部が「古典的恐竜像の確立と大衆化」第3部が「日本の恐竜受容史」第4部が「科学的知見によるイメージの再構成」となっている.なお対象となるのは基本的に恐竜だけでなく翼竜,魚竜,首長竜を含むものになっている.
ほとんどの展示は撮影可能(禁止のものにのみマークがついている).スタッフに確認したところ,撮影可能なものはSNSに上げてもよいということなので,適当にスマホで写した写真だが,いくつか紹介しておこう.
入り口から第1部に向かう最初の回廊.なかなかいい感じだ.
第1部「恐竜誕生:黎明期の奇妙な怪物たち」
19世紀の復元は太古のぬめぬめとした爬虫類のイメージや,哺乳類チックな復元になる.このあたりは黎明期というに相応しい.最初のイグアノドンの復元は水晶宮に大きな模型が作られたことでもとても有名だ.
第2部 「古典的恐竜像の確立と大衆化」
ここでは私が1960年代から70年代にかけて図鑑でよくみたイメージの原画が大量展示されている.特にチャールズ・ナイトとズデニェク・ブリアンの原画はまさに感涙モノだ.ナイトの原画はアメリカ自然史博物館.プリンストン大学所蔵のもの.ブリアンの原画はドヴール・クラーロヴェー動物園*1所蔵のものだ.
ナイトの絵画はさまざまなところでよく紹介されていて有名だ.私的にはグールドが絶賛していたアメリカ自然史博物館所蔵の「ドリプトサウルス」,そしてティラノサウルスに対して低く構えるトリケラトプスというおなじみの構図の原点ともいえる「白亜紀:モンタナ」を観賞できたのが格別だった.
ブリアンの絵は実は日本の図鑑業界にもっとも影響を与えたもので,眺めていると確かにこんなのを小学生の時に見たなという懐かしいものだ.
第3部 日本の恐竜受容史
ここは日本での恐竜受容史が,田村コレクション中心に説明されている.残念ながら多くが撮影禁止になっているが,明治以降の受容を示す多くの資料が展示されている.
この他さまざまなモデル,玩具,所十三の恐竜漫画の原画,恐竜をテーマにしたモダンアートなども展示されている.
第4部科学的知見によるイメージの再構成
ここは恐竜ルネサンス移行のさまざまな恐竜絵画が多数展示されている.中心になっているのは福井県立恐竜博物館所蔵のダグラス・ヘンダーソンほかの恐竜画のコレクション,インディアナポリス子供博物館所蔵のランツェンドルフ・コレクションにあるグレゴリー・ポール,ショーン・マーサ,マイケル・スクレプニクほかの恐竜画,そして日本の小田隆による恐竜画だ.
科学的にも新しく,とても美しい絵が多い.大いに心癒やされる展示だ.
以上が特別展の内容だ.まさに眼福だった.
そして当然ながら売店で売られている図録を入手.これがまた優れもので,特に倉谷滋による復元図の変遷の解説や,小田隆による恐竜の復元図を研究者とコワークする詳細の説明などは貴重なものだ.いろいろとうれしい一日だった.
*1:ドヴール・クラーロヴェー動物園はチェコの動物園だが,その収容動物の規模はヨーロッパ最大級で知られ.そして今回の原画は過去に大規模なブリアンの古生物画の展覧会を開いたことによるコレクションなのだそうだ