Spora and Gaia: How Microbes Fly with their Clouds

第11論文は海洋性微生物の適応としての雲の形成について
海洋性の藻類や微生物は化学的な誘導体を生産して分散・移動を行うように適応している.まず水面の泡に集まりクローン性のパッチ(藻類は水面にブルームを形成することがある)を作る.そこから泡がはじけるとともに離陸し,硫化メチルを放出し,水や氷の核を形成しやすくする.これにより空気中の水分が凝結し,凝固熱を放出,この熱により上昇気流を作り出す.これによりこの微生物は効果的に分散できる.
ラブロックは微生物による硫化メチルの生産は雲を作るためだと主張したが,なぜそのように進化するかは説明できなかった.ある生物個体が地球のために進化することはあり得ず,個体か,あるいはクローン性の集団のためにならあり得る.そもそも硫化メチルの前駆物質は浸透圧調整物質として進化してきたと思われ,そこから硫化メチル生産を起こすように進化するためには風速上昇による分散効果が重要である.
藻類がブルームを形成するのは海流が栄養分に富み急速に繁殖したあとで繁殖率が落ちたときや他のプランクトンによる捕食が起こったときなどであり,分散説と整合的.また硫化メチル生産モードにある藻類は赤い色をしていることが多いが(赤潮もこれの一種)これは硫化メチル生産とは独立の形質であり,おそらく紫外線からの防御適応と思われる.このこともこの分散仮説を支持している.
周囲の個体による分散ただ乗りの問題を防ぐためにはクローン的な集団はいっしょに行動することが重要になる.これは藻類のブルームがゼラチン状になっていることと整合的である.

ハミルトンの論文にしてはシミュレーションもなく短くてすっきりしている.