- 作者: アンドリュー・パーカー,渡辺政隆,今西康子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2006/02/23
- メディア: 単行本
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グールドのワンダフルライフで一躍有名になったカンブリア紀の大爆発.本書はこのカンブリア爆発がなぜ起こったのかについての新説「光スイッチ説」について提唱者の新進の古生物学者パーカー本人が丁寧に説明したもの.
第一線の一流の研究者本人による書物であり,しかも順を追って丁寧に書かれているので読み応えがある.テーマが明確でストーリー展開が自然なこと,色彩というこれまであまり取り上げられていない視点からの解説であること,全く新しい考え方が展開されていることから本書はきわめて魅力的である.訳も定評ある訳者であり,文体も簡潔でわかりやすい.所々のイラストも楽しい.
内容は,カンブリア爆発について説明したあと,順に,化石とは何か,色とは何か,動物の体色はどのように決まっているのか,暗いところに生息しているとどうなるか,現生動物の貝虫の色と光の仕組み,色素による色と構造色,薄板構造と回折格子の説明,眼とは何か,どのように進化したのかがつづく.こうやって十分準備しておいてからカンブリア動物群の体色の解説.そして「光スイッチ説」の真打ち登場という構成である.
眼の誕生により視覚からの情報量が飛躍的に増加し,これにより捕食と捕食回避のための外骨格の進化が爆発的に起こったという本書の主張は実に説得的だし,細部の解説もなかなか読ませる.それより何より回折格子により虹色に輝くバージェス動物群の想像復元図(カラー)に目を奪われる.これは捕食者に対する警戒色として進化したのだというのが著者の解釈.とにもかくにも初めて明らかにされる真実の迫力に脱帽である.
著者はすでにさらに動物の色彩に踏み込んだ第二弾を”Seven Deadly Colours”という題で出版しているらしい.これも早く訳されないかと楽しみである.