
Genes in Conflict: The Biology of Selfish Genetic Elements
- 作者: Austin Burt,Robert Trivers
- 出版社/メーカー: Belknap Press of Harvard University Press
- 発売日: 2006/01/15
- メディア: ハードカバー
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今日からホーミング.相同染色体の自分と相同な部分を検索して自分と同じでなければそこを切断し,そしてDNA修復機構により自分自身のコピーを増やすという典型的な利己的遺伝子である.ただ有害な効果はほとんど見つかっていないというのも面白い.今日読んだ部分はメカニズムのところでなかなか固い読みごごちである.
第6章 遺伝子変換(gene conversion)とホーミング(homing) その3
2. ホーミングとレトロホーミング
相同染色体を用いて修復する仕組みは2つの利己的遺伝子に利用されている.ホーミングDNA切断酵素遺伝子(homing endonuclease genes; HEGs)とDNAトランスポゾン(これは第7章で取り扱う)である.
HEGの研究は1970年代から始まった.なぜだかはわかっていないがHEGはオルガネルのゲノムに多い.また真核生物の中でも菌類,藻類,原生生物などの単純な生物に多くみられる.おそらくこれらの生物間の水平感染の容易さと関連があるのだろう.
HEGにより作られる酵素は3-4の独立したタンパク質ファミリーが認められ,複数の独立した進化を示唆している.
(1) どのようにホーミングするのか
HEGはもっとも小さな利己的な遺伝要素であり,2つの成分でエレガントにドライブを行う.(199ページの図)
まずエンドヌクレアーゼをコードする,そのエンドヌクレアーゼは特別なDNAシークエンス(15-30bp)を認識し,そこで切断する.HEG自身はその切断されるシークエンスの中に挿入される.これにより自分自身が切断されることを防ぐ.
核遺伝子のHEGの場合,この酵素がシークエンスを探索するのはHEGがヘテロになった接合子の中で1回限りである.
いったん切断されると,DNA修復メカニズムが働いて相同染色体からHEGが組み込まれたシークエンスがコピーされる.このようにしてHEGが+/-の細胞は+/+に修復される.これをホーミングと呼ぶ.
イースト菌のミトコンドリアの中のHEGは上記核遺伝子とほぼ同じメカニズムによる.(イースト菌のミトコンドリアは双方の親経由で伝達され,細胞の中で融合する)
HEGは糸状菌,植物,原生動物のオルガネルでもみられることがある.このようなオルガネルは単親経由で,受精後に片方の親経由のものは分解されるのだが,HEGがあるとこの分解を一部免れ広がることができる.
ほとんどのHEGはホストの遺伝子の真ん中で起こる.しかし発現の際そこをスプライスする遺伝要素を通常ともなっているので,表現型への影響はほとんど無い.(イントロンのDNAスプライシング,インテインのタンパク質スプライシング両方ある)
(3) HEGとホストの配偶システム
ホーミングは高い効率で起こる.しかしこれはヘテロの時だけ生じるので,インブリーディングが多いとドライブは緩やかになる.これは実験でも確かめられている.この実験からはまたホーミングは適応度には影響を与えていないことがわかる.
ボックス6.1 インブリーディングにおけるドライブ遺伝子の淘汰係数
半数体の細胞は+,-,(この頻度をp, qとする)倍数体の細胞は+/+,+/-,-/-,(この頻度をx, y, zとする)の3種類の遺伝子型を持つ.
ある世代の倍数体の3種類の遺伝子型の頻度は
ただしはライトの近親交配係数,
ここで+/-の個体が減数分裂の際,ドライブにより+,と-の配偶子を
と
の比率で生じるとする.
すると次世代の半数体の遺伝子型の頻度は
反復法で引き続く世代の遺伝子型の頻度を算出することができる.
そして実効淘汰係数は
ただし
はハーディワインベルグ比に対しての相対頻度,
はドライブの強さの指標
ドライブ対立遺伝子がまれなとき(p~0)は淘汰係数はcH,となり,普遍的なとき(p~1)はcH/(1-cH)となる.
インブリーディングが多いと(H~0)淘汰係数は小さくなることがわかる.