The Folly of Foolsブログ

トリヴァースが「The Folly of Fools」という題名で「Psychology Today」サイト上にブログを開設していることを発見した.
http://www.psychologytoday.com/blog/the-folly-fools


4月に開設されてまだ2ポストだが,本書の補足のような記事でなかなか面白い.


4月の記事は「社会によって自己欺瞞は異なるか」

  • 単純なテストだと日本,韓国,中国などのアジアの国の方が西洋諸国よりも自信過剰傾向が低く出る.これは謙譲の文化(謙虚さを競い合う)が効いているのかもしれない
  • 最近のリサーチでは,ジニ係数と自信過剰傾向が相関すると報告されている.

日本人が自信過剰傾向を抑えて回答する傾向については,最近,正確な回答に褒賞を与えると消失するというリサーチが報告されたと聞いたような記憶がある.
経済的格差と自信過剰傾向については,トリヴァースはこのリサーチでは因果の方向はわからないが,自信過剰傾向が格差を作るという説明は難しく,格差があるとより自信過剰になろうとする傾向は容易に理解できるのではないかとコメントしている.


5月の記事は(このブログ自体が心理学のサイトにあることもあり)心理学の自己欺瞞を取り上げており,辛辣で厳しい.

  • Wichertsたちによるアメリカ心理学協会(APA)の50以上のジャーナルにおける論文の調査の結果:著者に名を連ねるものは追試のためにデータを提供する義務に同意しているはずだが,73%の著者はデータを持っていなかった
  • そして,統計的な誤りは極めてよくあり,学者には自分に都合の良い方向に間違うバイアスがある.
  • そこでWichertsたちはこのデータの不所持と統計的に間違う傾向に関連があるかどうかを調べた:実験デザインがよく似ている2ジャーナル,49の論文を調査対象にして調査.
  • やはり67%の著者は問われてもデータを提供できなかった.(ここではどう言い訳したかも分類されていて面白い)
  • そして有意差を主張する論文に置いて,p値が0.05に近づくほど彼等はデータを持たず,都合の良い方向への初歩的な統計的な誤りをおかす傾向があった.(49論文の1148の統計的テストで,初歩的な誤り*1は4%,うち96%は彼等に都合の良い方向だった)


トリヴァースは,「社会学や医学でも同じではないか,そして都合の良いデータだけ見せることが可能なことを思えば,これらはおそらく氷山の一角に過ぎないだろう.」とコメントしている.


今後様々な自己欺瞞について継続的に記事が書かれるのだろう.トリヴァース流の辛辣さが楽しみだ,

*1:両側検定と片側検定のまちがいなど