
The World Until Yesterday: What Can We Learn from Traditional Societies?
- 作者: Jared Diamond
- 出版社/メーカー: Allen Lane
- 発売日: 2012/12/31
- メディア: ハードカバー
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<ファーストコンタクト>
伝統社会においてはバンドごとにテリトリーを持つ.そしてそのテリトリーを越えるのはとなりの部族が同盟部族であってもリスクがある.ちょうどそのときに何らかのトラブルがあって同盟が破棄されることが(それなりの頻度で)あるのだ.ダイアモンドは次のような実例を挙げている.
ダニ(ニューギニア高地族の一つ)には多くの部族があり,数十の同盟に分かれている.ある部族の4人が,平和時に隣の部族を訪れた.うち2人は親戚がいた.しかしその部族はちょうど,4人の部族との同盟部族によってメンバーが殺されるという事件があった.このため親戚のいない2人は襲撃され,うち一人に逃げきれずに殺された.
このような世界で暮らしていると当然ながら知識の範囲は非常に狭いものになる.ダイアモンドはこれについても様々な例をあげている.例えば上記のダニ族はある渓谷内に居住しているのだが,その尾根の内側しか知らないし,さらに実際に行ったことがあるのはそのごく一部に過ぎない.
このような知識の限界は西洋人との出会いにより突然破られる.
現在なお西洋文明とコンタクトしていない部族はニューギニアとアマゾンの僻地にわずかにいるだけだ.しかし彼等も隣の部族から聞いていたり,上空を飛ぶ飛行機を見ている.しかしかつては完全なファーストコンタクトがあった.
最後の大規模なファーストコンタクトは1930年代から50年代にかけてのニューギニア高地族とのコンタクトになる.これはオーストラリアとオランダ植民政府が主導してなされた.最も大きな規模のものはAMNHとオランダ植民地政府による生物探査でダニ族のいるバリエム渓谷を見つけたときだ.彼らは人の住まない原生林を探検するつもりで飛行機に乗り,よく灌漑され耕作された畑を見て驚愕した.
このファーストコンタクトは詳しい記録が残されている.
- この探索の記録は「ファーストコンタクト」などの3冊の本になり,さらに写真や動画も残されている.
- また50年後のインタビューもある.そのときに子供だった彼らは.アメリカ人が真珠湾やケネディ暗殺や9/11が生じたときに自分がなにをしていたかをよく覚えているようにファーストコンタクトのことをよく覚えていた.
ダイアモンドはこのインタビューについて詳しく紹介している.
- "はじめて彼らが来たときには恐ろしくてたまらず,なにも考えられず,泣きわめくことしかできなかった.父が私を引きずってくれ木の陰に隠れた.彼らが帰った後で私たちは座って話し合い「白い人」の話を作り上げた.『彼らは私たちの祖先で,死後白くなって山の向こうから戻ってきたのだ』と"
- 彼らは「白い人」を自分たちの知識の中に当てはめようとした.多くは「空の人」と扱い,不滅の精霊や幽霊として考えた.
- 「白い人」も人間であると彼らを納得させたのは,キャンプに残した人糞(埋めた人糞を掘り出して確認する)と,差し出した娘による「彼らも性器を持ち村の男と同じようにセックスする」という報告だった.
このファーストコンタクトのフィルムはテレビなどで放映されることもあって,その断片を何度か見た覚えがあるし,それを含むドキュメンタリーがYoutubeにもいくつかアップされているようだ.以下のものはプリビュー版なので上記のフィルムそのものは入っていないようだが,本編を購入すれば見られるのだろう.ダイアモンドはそれまでの彼等の知識の狭さを印象づけたいようだが,それを越えてこれらの記録はなかなかな興味をそそるものだ.
http://www.youtube.com/watch?v=2Y5rC7kDx3o