Virtue Signaling その10

Virtue Signaling その10

Virtue Signaling: Essays on Darwinian Politics & Free Speech (English Edition)

Virtue Signaling: Essays on Darwinian Politics & Free Speech (English Edition)


道徳性の個人差の問題.ミラーはまずビッグファイブを吟味した,続いてメンタルヘルス障害,一般知性も考察する.
 

メンタルヘルス的特徴

 

  • ほぼすべての重大なメンタル障害は利己性を増強させ,道徳的徳・性的魅力・社会的地位を減少させる.これは鬱,統合失調症,サイコパスに顕著だ.そして多くのパーソナリティ障害,例えばパラノイド,ナルシシスティック,境界性障害は反社会的行動と相関する.
  • メンタルな障害の兆候は他者からの社会的,性的拒絶につながる.そして重篤な障害は性的魅力の低減を通じてほぼ常に繁殖成功を低下させる.
  • 重篤なメンタルな障害は道徳的徳を破壊するが,しかしそれはほかのもの(教育,雇用,ヒトとのつながり,衛生など)もすべて破壊する.ではより程度の軽い障害,例えばパーソナリティ障害は特に性的魅力を大きく毀損させるのだろうか.どうも多くの障害はそうであり,症状に大きな性差があることも合わせ,性淘汰が関与している可能性が高いだろう.(アスペルガー症候群,ナルシシスティック,境界性障害について,それぞれ性差があること,そしてどのように性的魅力を失わせるかの説明がある)
  • これらのパーソナリティ障害はみな長期的配偶に関する性的魅力を失わせるが,ポピュレーションの一定割合が症状をもつ.これらの障害を親密な関係構築への影響の視点から調べることは,道徳的徳や悪徳,そしてその配偶選択を通じた起源への理解につながるだろう.

 

知性

 

  • 知性は道徳的な結合価(valence)を持つ概念だ.だからこそIQは常に熱い論争の的になるのだ.
  • 知性が人間生活のほぼすべての領域での実行能力そして学習能力を予測することは確立された事実だ.そしてリサーチャーは知性を最もよく表す指標はg因子であると認めている.
  • あまり注目されていないのは高い知性は道徳的だと考えられる行動傾向(例えば他者のニーズに感情的に敏感であること,誠実に行動すること,運動と食事に気をつけて健康を保つこと,幸福な結婚生活を送ることなど)とも相関していることだ.そして知性は多くの形態の社会的経済的芸術的な成功とも相関する.これらの知性と道徳の相関は,知的な男性や女性が長期的配偶相手として魅力的である1つの理由だろう.逆に知性が低いことは多くの非道徳的行動傾向(殺人,レイプ,薬物中毒,怠け癖など)と相関がある.
  • そして多くの長期的スタディや遺伝的スタディは知性とこれらの傾向が単に相関しているのではなく,知性がこれらを引き起こす,あるいは遺伝要因が知性と行動傾向に共に影響を与えている関係にあることを示している.
  • 知性は道徳的徳自体ではないと考える人もいるだろう.知性が高いとそういう行動を見せる傾向があるだけだと.しかしではそもそも「道徳的徳」とは何だろうか.それは道徳的行動を予測するような個人差次元ではないのか.もし親切さがやさしい行動を予測する道徳的徳なら知性もそうだと考えるべきだ.
  • 知性の擬道徳的地位を受け入れるべきもう1つの理由は最近の徳倫理学と徳認識論の収斂現象だ.伝統的な認識論は特定の概念システムの評価を一貫性を持つ基準を通じて行おうとする.これに対して徳認識論は真の信念は知的な徳の行動(偏らず,認識的責任を持ち,知的勇気を持ち,合理的で認知的に複雑なエージェントの行動)から生まれると考える.
  • 徳認識論の最も好む記述レベルは,特定の行動ではなく,「個人」だ.これは徳認識において個人差の強調に結びつく.そしてこの個人差は知性リサーチャーが百年前から計測に成功していたものだ.このように知性は,性的に魅力的で,徳倫理学と徳認識の交差するところにある擬道徳特徴なのだ.

メンタルヘルスの障害がないことは遺伝的な欠陥が少ないというシグナルになるだろう.それが道徳的行為を通じて露見しやすいとするとこの議論は納得できる.性差があるところもこの議論に整合的だ.
知性の議論はやや微妙なところだ.確かに知性も集団内でかなりの分散がある.自然淘汰だけならもっとユニバーサルであってもいいのかもしれないとするとこれが性淘汰にかかるハンディキャップシグナルとして機能していてもおかしくはない.道徳的な結合価があるという指摘も興味深い.いろいろ考えさせられる.