訳書情報 「都市で進化する生物たち」

 
以前私が書評したオランダの進化生物学者メノ・スヒルトハウゼンによる「Darwin Comes to Town」が「都市で進化する生物たち:“ダーウィン”が街にやってくる」という邦題で邦訳出版された.本書は生物の都市環境への進化をテーマに扱った一冊になる.まずアリが作り上げたコロニーが好蟻性昆虫たちのニッチになっているように,ヒトが作った都市環境もまた多くの生物にとって近郊とは異なる新しいニッチ環境なのだという視点を提示し,そこからそこでどのような生物がどのように適応していったのかを様々な例を用いて詳しく解説してくれる.
都市環境は様々に近郊と異なっている.捕食者が入り込めない場合もあるし,イエネコなどの別の捕食者がいる場合もある.生息域が小さく分断されることもあるし,化学物質(毒物)や照明や騒音に関する環境要因も異なる.外来種も多い.そしてそこで強い淘汰圧がかかり,様々な適応が生じるのだ.
スヒルトハウゼンは様々な魅力的な事例を本書全体に散りばめるように取り上げてくれていて大変楽しい.このほかグローバル化の進展によるさらなる加速や都市計画のデザインに都市環境への進化を考慮すべきだなどの話題も取り上げられている.私的にはオオシモフリエダシャクの工業暗化の最近のツイスト,大胆さと知性の有利さ,都市環境に適応した生物同士の相互作用の影響あたりの話が大変興味深かった.前著と同じく大変魅力的な一冊だと思う.

原書に対する私の書評
shorebird.hatenablog.com



関連書籍

原書

 
スヒルトハウゼンによる前著 
同邦訳 私の書評はhttps://shorebird.hatenablog.com/entry/20160315/1457995356