書評 「Birds and Us」

 
本書はティム・バークヘッドによる鳥類と人類のかかわりについての本になる.バークヘッドは鳥類の性淘汰をめぐる研究で有名な鳥類学者,行動生態学者で,様々な著書があるが,最近では鳥類の行動生態についての総説本,鳥類学の歴史についての総説本,鳥の卵についての本などを書いている.本書は鳥類学や学説史よりさらに一般的な鳥類と人類のかかわりを扱っていて,大家の風格を感じさせる一冊となっている.
 
冒頭の序言では,これまでの自と鳥とのかかわり(アーサー・ランガムの子ども向け小説*1に登場するハシグロアビの話に6歳の時に夢中になり,少しあとでスコットランドで実際にそのハシグロアビに出会うという経験から鳥類に魅せられるようになり,ついには鳥類学者としてのキャリアを歩むことになる)に触れ,本書では人類と鳥とのかかわりの歴史(資源としての利用から,バードウォッチングで楽しむようになるまで)を綴っていきたいと抱負を語っている.
 

第1章 新石器時代の鳥

 
第1章ではスペインにある新石器時代の洞窟壁画がテーマになる.有名なラスコーやアルタミラ洞窟の壁画は哺乳類が中心だが,エルタホ渓谷の洞窟壁画では鳥類がやや抽象的なシルエットの形で多数描かれている.バークヘッドはその発見の経緯,描かれた鳥(フラミンゴ,サギ,トキ,ノガン,猛禽,セイタカシギ,バンなど判別できるだけで16種以上208羽*2)を詳しく語っている.ここでバークヘッドは新石器時代人がなぜこれを描いたのかについて考察する.20世紀中ごろまでは,芸術のため,宗教的トーテミズム,などの説明に勢いがあったが,食料とされた鳥類種と描かれた鳥類種が一致していることから否定された.1980年代にはシャーマニズムの幻覚説が生まれ,現在ではシャーマニズムを含む宗教的な説明が主流になっている.バークヘッドは宗教的な意味合いもあるかもしれないとしながら,その鳥の姿のリアリズムに注目し,あるいは現代でいうフィールドガイド的な役割もあったのではないかとコメントしている.
 

第2章 カタコンベ:古代エジプトの鳥

 
第2章は農業革命以降の人類と鳥類の関係がテーマであり,特に古代エジプトでの事情が語られる.
古代の農業革命は宗教革命を伴い,エジプトでは様々な動物神が信仰された.またエジプトは(ジブラルタルと並ぶ)ヨーロッパとアフリカの渡りの中継点であり,多様な鳥類が集積し,捕鳥網やデコイが発明され,資源として利用された.墳墓の壁画にも様々な鳥は描かれており,その平面的で理想化されたイメージはどの種の鳥が描かれたのかが明確にわかるものになっている.
そしてエジプト文明の象徴的存在でもあるミイラにも多くの鳥が含まれている.これまで発見された鳥類のミイラは90種以上で,特にトキ(アフリカクロトキ)のミイラは大量に見つかっている*3.この鳥のミイラは死者のための食料,ペットであり,トキは知恵の神であるトト神のシンボルでもあった.考古学者は古代エジプト人は大量のミイラをコンスタントに作るためにトキを飼育していたと考えてきた(飼育場の遺跡も見つかっている).しかし最近のDNAのリサーチによると彼等は遺伝的ボトルネックを経ておらず,バークヘッドはおそらく野生の巣から卵をとってきていたのだろうと推測している.
 

第3章 鳥類記述の始まり:ギリシアとローマ

 
第3章は鳥類学の始まりがテーマ.そしてそれはアリストテレスから始まる.
アリストテレスは鳥好きで,繁殖に興味を持っていた.彼は様々な鳥の交尾頻度を観察し,鳥の脚の大きさと精巣能力にトレードオフがあると主張した(バークヘッドはこれは大間違いだったとコメントし,精子競争やペア外交尾にかかる現代の知見を解説している).アリストテレスはまた機能あるいは生活様式に着目して鳥の分類を行った.アリストテレス自身は自分が間違いうることを理解していたが,彼の観察に基づく記述は(仮説構築と検証を行う科学革命が始めるまで)1500年間も後代の学者に決定的な説明として受け継がれた(バークヘッドはリンネやキュビエもこの観察に基づく段階に止まっており,それを打ち破るにはダーウィンを必要としたと語っている).
アリストテレスやギリシアの哲学者たちは理性と言語は緊密な関係にあると考えた.アリストテレスは鳥の囀りも一種の言語と考え,一度は鳥も理性を持つとした(例えばアリストテレスは鳥は囀りを学習によって獲得すると論じている).しかし最終的にそれは模倣に過ぎないと考えるに至り鳥の理性を否定した.これはキリスト教的な動物とヒトを峻別する世界観に道を開き,鳥をリソースとしてのみ見る価値観につながった.
古代ローマを代表する博物学者は大プリニウスになる.彼は百科事典的な知識を書き残し,その知見はその後の1500年間ドミナントであり続けた(ワシ,カッコー,クジャク,ヨタカ,ウズラについての記述の詳細がバークヘッドにより講評されている).古代ローマ人はまた多様な鳥類を食材として楽しんだ.(アピシウスのレシピからフラミンゴの舌の料理が紹介されている)
本章は最後にアリストファネスの演劇「鳥」と現在の西洋のワシの紋章の起源(大プリニウスの記述にさかのぼれる)についての蘊蓄を述べて終わっている.
 

第4章 追求:狩猟と顕示的消費

 
第4章のテーマは中世ヨーロッパの鷹狩り.登場するのはバイヨータペストリーに登場するハロルド王,ポンテュー伯ギーとともに描かれる鷹,そして神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ2世の鷹狩りの書だ.
バークヘッドはまずバイヨータペストリーに描かれているタカについての最近の考察*4の蘊蓄を語っている.西洋の鷹狩りの起源は紀元前1300年ごろのアナトリアまで遡れるようだ.ギリシアの歴史には記述がないが,ローマのモザイクにはそれらしい絵が描かれている.ブリテン島においてはローマ人が去った後サクソン族が鷹狩りを持ち込んだ.鷹狩に使われるのはオオタカ,ハイタカなどのタカ類と,シロハヤブサ,コチョウゲンボウなどのハヤブサ類だ.鷹狩りは王を含む貴族層のステータスシンボル(タカの飼育調教にはコストがかかった)であり,鷹狩りをこなすにはタカとの絆と自然の知識が不可欠だった.
バークヘッドは15世紀描かれたペピジアンスケッチに登場する鳥の多くが猛禽類であること,黙示録に現れる鳥のイメージに触れたあと13世紀のフリードリッヒ2世の鷹狩りの書を採り上げる.フリードリッヒ自身鷹狩りを行う君主であり,鷹狩りの書にはイラストとともに鳥の解剖,生態,渡りについての記述が含まれている.バークヘッドは,フリードリッヒはキリスト教のドグマ,神秘主義,シンボリズムから脱却し鳥類を考察したのであり,鳥類学の祖とも呼べると評価している.
バークヘッドは最後に,中世は鳥の扱いが残酷だったことにも触れている.タカの調教は残酷な過程*5を含むもので,ツルやサギなどの獲物の扱いにも容赦がなかった.そしてそれらは17世紀以降ゆっくりとより残酷ではない方向に変わっていったのだ.
 

第5章 ルネサンス:鳥の解剖学

 
第5章はルネサンスとチューダー朝英国がテーマ.
冒頭はレオナルド・ダ・ヴィンチによるキツツキの長い舌の解剖学的探求の話が描かれる.この観察と探求への姿勢は中世のドグマ的時代からの解放の象徴なのだ.そこからバークヘッドは鳥類の科学的探求としてのルネサンスをとりあつかい,古代ギリシア哲学の再発見,ルネサンス的探究姿勢とキリスト教教義との緊張関係,アンドレアス・ベルサリウスの人体解剖学,ヴォルヒャー・コイターの(鳥類を含む)比較解剖学,ピエール・ベロン,アンドレ・テヴェ,コンラッド・ゲスナーたちのオオハシの頭部の解剖学的探究物語を語っている.
ここでチューダー朝英国に話は変わる.16世紀の英国では鳥は農業害獣として扱われていた.16世紀に成立した一連の害獣駆除法は片方で貴族の領地の狩猟動物を保護しながら,農地に飛来する鳥類の駆除を奨励した.バークヘッドはこれらは実際に鳥類の数を減らしただけでなく人々の心に駆除心理を深く植え付けたのだとコメントしている.またこの部分では領地の鳥類を詳しく記載した貴族の残した文書,鳥類が食料として,また薬として利用された記録などについても触れている.
 

第6章 科学の新しい世界:ウィグルビーとレイ

 
第6章のテーマは17世紀の鳥類学者フランシス・ウィグルビーとジョン・レイに始まる新しい鳥類学.冒頭はバークヘッドの若き日のサギの観察の思い出話から始まる.バークヘッドの観察フィールドはフォークス家の領地で,その館にはターナーの鳥類画コレクションがあることで有名だった.バークヘッドは鳥類学者として大成したのちにそこを訪れ,ターナーの絵を見ることになる.そしてウォルター・フォークスがこのコレクションを始めるきっかけになったのがウィグルビーとレイの鳥類本だった.
バークヘッドはウィグルビーとレイは科学革命の流れの1つを形成したと評価する.それまでの鳥類の記述は事実と神話と幻想が交じり合ったものだったが,彼等は観察された客観的事実を優先したのだ.そして彼等はハビタットと解剖を基本にした鳥類の分類に取り組み(これは100年後のリンネの鳥類分類の元になっている),1676年に「鳥類学」を出版した.そこでは英国の鳥のすべて,ヨーロッパの鳥の大半が記述され,さらにドードーの様な珍しい鳥も扱われている(バークヘッドはここでドードーがヨーロッパに知られた経緯などを詳しく語っている).新太陸の鳥はスペインの征服とともにヨーロッパに知られるようになった.バークヘッドはここで新大陸の鳥を科学的に記述し,アステカ文明における鳥の宗教的文化もあわせてヨーロッパに伝えたフランシスコ・ヘルナンデス,ウィリヘルム・パイズ,ジョージ・マクグレイブたちの業績を紹介している.この時代は大征服時代でもあり,ヨーロッパでは新大陸の鳥の美しい羽が帽子用に大量に輸入されて消費された(バークヘッドはこれを固有文化の陳腐なディズニー化だと嘆いている).
最後にバークヘッドは,ウィグルビーとレイは自然神学的考えから自由ではなかった*6が,小さなひねりを加えているとコメントしている.レイは「動物は人間に利用されるためにだけ神にデザインされているわけではない.人間はその知恵で利用を見いだしているのだ」とし,鳥の姿や囀りの美しさを賞賛している.バークヘッドはこの自然をそのまま賛美する態度はキリスト教的態度とは異なっているのだと評価している.
 

第7章 鳥への依存:非顕示的消費

 
第7章のテーマは近世における鳥の資源としての利用だ.特に採り上げられているのはスコットランドのファロー諸島島民の海鳥資源の利用になる.ファロー諸島の切り立った崖は海鳥の一大コロニーであり,4〜6世紀頃から定住した島民たちは海鳥を様々に利用する文化を作り上げた.ルーカス・ディーベは17世紀にファロー諸島の海鳥の自然史と島民の文化を記した本を書いた.バークヘッドをそこに描かれたオオウミガラス,ウミガラス,ツノメドリ,フルマカモメの生態やそれを利用する島民文化,そしてそれが20世紀にまで受け継がれ,しかし過剰捕獲により多くの鳥の個体数が減少している状況を詳しく紹介する.また同じように海鳥に依存したセントキルダ島の文化についてもここで取り扱っている.
 

第8章 鳥の自然神学の終焉:ダーウィンと鳥類学

 
第8章のテーマはダーウィン前後の英国の鳥類学.
レイの鳥類学はギルバート・ホワイト,レオナード・ジェインズ,ジョン・ウッドたちに受け継がれ,観察を主体にした様々な鳥類学が実践された(それぞれの取り組み姿勢や業績が簡単に紹介されている).彼等は多かれ少なかれ自然神学の影響下にあった.またヴィクトリア朝の英国ではカナリアなどの鳴鳥の飼育が流行する.貴族たちはキリスト教的ドミニオンから鳥をどう扱ってもいいのだという感覚と,ペットとしての愛着対象の感覚の両方を持っていたようだ.
このような状況の中でダーウィンの「種の起源」が発表される.自然淘汰は自然における神の役割をなくしたことになる.バークヘッドはこれが巻き起こした論争のうち鳥類に絡むものを語っていく.ダーウィンの支持者としてはハクスリーとフッカーが有名だが,鳥類学における支持者にはヘンリー・トリストラム,アルフレッド・ニュートン,鳥類愛好家のチャールズ・キングズレイ,フランシス・モリスがいる(キングズレイとモリスについては詳しく紹介されている).自然神学との論争の関係で重要な鳥にはカッコーがいる.カッコーのヒナが宿主の卵を巣外に押し出すことと神の慈愛がどう調和するのかがトピックになった.バークヘッドはこの現象が知られるようになった経緯から始めて詳しく解説している*7
またバークヘッドはここでダーウィンが絵画のラファエル前派の絵画に与えた影響(自然神学的なテーマを描くことをやめて唯美主義,象徴主義に移行),オーウェンの自然神学的好みはロンドン自然史博物館の建築様式に残ったことについても触れている.
 

第9章 危険な戒律違反:殺しの時代

 
第9章のテーマは近代における鳥の殺戮.19世紀の博物学者は熱心に鳥やその卵の標本を集めた.この伝統は16世紀からのもので,剥製は博物学の基礎資料として扱われた.バークヘッドは採集法,剥製製作法,ラベリングの進歩を詳しく解説し,意欲的にインドの鳥の標本を集めたアラン・ヒューム*8,英国のスパイ兼鳥類学者で博物館から卵標本を大量に盗んだリチャード・マイナーツハーゲン,巨額の資産を標本集めにつぎ込んだウォルター・ロスチャイルドの逸話を語っている.
彼等はどのようにこれらの大量殺戮を正当化したのだろうか.バークヘッドはその背景にはステータス誇示のための蒐集欲があり,キリスト教のドミニオン思想,そして科学革命以降の科学のあり方はその正当化に役立ったのだろうとコメントしている.とはいえ博物館に納められるような標本数(10百万体ほどだそうだ)はネコが捕獲する数(1日でそのぐらいだとコメントされている)に比べればたいしたことはない.問題はコレクターたちが特に珍しい標本を集めようとすることだ.バークヘッドはコレクターの蒐集欲が絶滅を加速した事例をいくつか紹介している.
今日の科学では標本蒐集は下火になった(これにはヨーロッパとアメリカで温度差があるそうだ*9.しかし過去集められた標本(鳥類標本は他の分類群に比べてより完全なのだそうだ)は科学に多いに貢献し,現在も新たな技術(DNA分析など)で新しい知見を得るのに貢献している.
バークヘッドは最後に卵蒐集(日本ではあまりポピュラーな蒐集対象ではないようだが,英国では非常に盛んだったそうだ)にもふれて,その怪しい魅力と蒐集家たちの狂騒ぶりについて語っている.
 

第10章 鳥を観る:光の顕現

 
第10章のテーマはバードウォチング.鳥類学の流れは標本集めから観察にうつる.バークヘッドはその移行を鳥類学者エドモンド・セルースのヨタカを観察していたときに得た啓示として描いている.この移行は双眼鏡の普及とともに世界に広がり,鳥類学は変容し,鳥類保護の流れを作り,そしてバードウォッチングはメジャーな趣味になった.バークヘッドは鳥類学の変容として,エリマキシギやカンムリカイツブリのオスのディスプレイとメスの選り好みなどの行動の研究,足輪標識に基づく渡りの研究を紹介し,ガイドブックの登場,バードセンサス,バードウォッチャーによる科学の市民参加,鳥類学のためのトラスト創設などの動きを解説している.またここでは幼い頃からバードウォッチングに親しんで鳥類学者へとなった自分のキャリアを振り返り,バードウォッチングの楽しさ,リスティングの醍醐味,デジカメやスマホそしてeBirdなどの技術進歩,アッテンボローが登場するような自然番組の興隆などについても語っている.
 

第11章 鳥類研究のブーム:行動,進化,生態

 
第11章のテーマは鳥類行動生態学の興隆.バークヘッドはこの章を数多くの鳥を卵から飼育したマグダレーナ・ハインロートの話から始めている.彼女はその飼育と行動観察により鳥類の行動にかかる本能的プログラムと孵化後の環境による影響をインプリンティング現象の発見とともに考察した.残念ながら彼女の研究は(ドイツ語で発表されたために)注目を集めなかった.そしてエソロジーと呼ばれる新しい学問の創設者とされたのはのちにノーベル賞を受賞したローレンツ,ティンバーゲン,フリッシュとなった.バークヘッドはローレンツはハインロートとユクスキュルの肩に乗っているのだと評価している.
しかしエソロジーは1970年代に急速に時代遅れとなった.行動の適応度を考察する行動生態学が勃興したのだ.バークヘッドはその先頭ランナーとしてのデイヴィッド・ラックの業績,ウィン=エドワーズとの論争,ジョージ・ウィリアムズ,ジェフ・パーカー,ロバート・トリヴァースの登場,ドーキンスの「利己的な遺伝子」,社会生物学論争という流れを描いていく.そして行動生態学の成功の原因は,予測と一般性のほかに鳥類があったのだと指摘する.鳥類は,多様で美しく行動観察が容易であり,行動生態学の完璧な対象動物だったのだ.バークヘッドはここからニック・デイビスのカッコーの托卵研究,ヘルパーとハミルトンの血縁選択的解釈,モノガミーとされていた鳥類のEPCの発見などの話を語っている.
 

第12章 オオウミガラスの亡霊:第3の大量絶滅

 
第12章のテーマは保護と絶滅.物語はヴィクトリア朝英国の鳥類学のドン,アルフレッド・ニュートンから始まる.彼は衒学的な知識を集める典型的なスノッブで特段の学問的な業績はなかったが,鳥類保護の動きに道を開いた先駆者だった.それまで英国では狩猟対象鳥の保護法制はあったが,海鳥や猛禽や小鳥は対象外だった.ニュートンはアイスランドでオオウミガラスを探索したが見つけられず,ヒトの乱獲による絶滅を知る.彼は以後鳥類の保護に情熱的に取り組むことになる.彼は大衆のセンチメンタリズムに訴えると同時に,当時のドミニオンを信じる人々にはそれを濫用すべきではないと主張した.これはターニングポイントになった.バークヘッドはここからニュートンに続く様々な先駆者たちを紹介し,動物愛護協会へのヴィクトリア女王の認可(1840),英国海鳥保護法(1869),鳥類保護協会*10の設立(1889)などの一般的な鳥類保護の流れを解説している.狩猟や科学目的の収集からの保護の流れはこれにやや遅れる.これは狩猟対象鳥の数のリサーチがなされ,その減少が明らかになって盛り上がることになる.これらの流れは合わさり,1961年にはWWFが創設される.
バークヘッドは保護の視点も念頭に置いてなされた50年にもわたる自分のウミガラスの長期リサーチの顛末を最後に説明している.それは個体数増減の要因分析から始まり,トピックは大洋汚染から温暖化に移り変わったのだ.
 

エピローグ

 
バークヘッドはエピローグで人類と鳥類のかかわりを振り返る.それは宗教的な意味付けから始まり,科学的探求と資源利用に大きくシフトした.そして最近また愛着と保護に向けて大きく動いているが,そこにはスピリチュアルな世界への復帰と共感の広がりがあるのだろうと感慨を語っている.
 
 
本書は大家による悠然とした歴史物語の風格を持つ鳥類本だ.新石器時代から始まり,様々な人類と鳥類のかかわりが大河が流れるがごとく語られている.話はあまり難解に流れず,一般向けにわかりやすく書かれている.東洋の話がほとんどないのが残念だが,鳥類好きで歴史好きの人にはとても楽しい一冊だ.
 
 
関連書籍
 
バークヘッドの本
 
鳥の卵についての本.エッグコレクターの話も出てくる.

 
同原書 私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20160824
 
鳥類学説史.ダーウィン以降を扱う.私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20140418
 
その前著になるアリストテレスまでさかのぼる鳥類学の歴史. 
鳥の感覚を扱った本,私の書評はhttp://d.hatena.ne.jp/shorebird/20130409
 
同原書 
性淘汰と性的コンフリクトについての行動生態学の本. 
同邦訳. 
フリードリッヒ2世の鷹狩りの書には邦訳がある.

 

*1:「Great Northern?(邦題:シロクマ号と謎の鳥)」,これは私も大好きだった「ツバメ号とアマゾン号」シリーズの最終第12巻.子供たちがハシグロアビの卵をコレクターから守ろうと奮闘する物語だ.

*2:このような多様性はの背景には,エルタホがジブラルタル海峡の近くにあり,鳥類のヨーロッパとアフリカの渡りの巨大集積地だった事情があると推測されている

*3:トゥーナ・エル・ガベルの地下カタコンベでは4百万羽の鳥のミイラが発見されその多くはトキのミイラなのだそうだ

*4:1980年代にウィリアム・ヤップにより解説されたもの.タカの種類にもめられた意味とそれが描かれている場面でのハロルドとギーの関係性が考察されている

*5:服従させるために睡眠を許さない期間があるのだそうだ

*6:のちのウィリアム・ペイリーはこの2人に影響を受けているという指摘があるそうだ

*7:反進化論の立場に立つグールドは宿主親が神の意向を受けカッコーを育てるために自らの卵を廃棄するのだと主張したそうだ.

*8:彼のたどった悲劇的な運命も書かれている

*9:ヨーロッパの鳥類学者たちはもう標本を集めようとはしないが,アメリカの一部の博物館にはまだ蒐集意欲があるそうだ.これはアメリカの博物館にはしばしば富裕層の支援があるからではないかとされている

*10:当時の重要な論点は婦人用帽子に用いられる羽根のための乱獲だった