読書中 「The Evolution of Animal Communication」第1章 その6

The Evolution Of Animal Communication: Reliability And Deception In Signaling Systems (MONOGRAPHS IN BEHAVIOR AND ECOLOGY)

The Evolution Of Animal Communication: Reliability And Deception In Signaling Systems (MONOGRAPHS IN BEHAVIOR AND ECOLOGY)




第6節は発信者と受信者の利害にかかるカテゴリーわけだ.本書はこのあと第2章以降は利害のカテゴリーごとに具体例を見ていくという構成をとっている.この予習のような節だ.


動物個体間で利害が一致することはクローンや一個体内の器官同士,細胞同士のような場合に限られるだろう.もっともザハヴィはその場合にも信頼できる信号のためにはコストが必要だと述べていると紹介されている.
確かにザハヴィの本にはそのような記述があったような気がする.このことの是非についてはあまり論じられているのを見たことがない.本書でもザハヴィ説を紹介するにとどめ,特に理論的に是非を論じているわけではない.文脈からは著者たちはこの考え方に否定的なようだが,もう少し言及して欲しいところだ.


本書でのカテゴリーわけは以下の通り

  1. 利害が重複しているが一致はしていない.血縁関係にある場合など.
  2. 発信者と受信者の進化的な利害は異なっているが,逆になっているわけではないもの.本書では「発散した利害」と呼んでいる.特に性淘汰にかかる信号についてはこのカテゴリーで論じられる.
  3. 発信者と受信者の利害が真逆なもの.これは2個体が何か(食料やテリトリーや配偶者)を争っているときに現れる.利害はゼロサム的だ.
  4. 最後に受信者として想定されてないものが受信する場合として「盗聴者」を取り上げる.


第1章 イントロダクション


(6)発信者と受信者の進化的利益