Virtue Signaling その27


Virtue Signaling: Essays on Darwinian Politics & Free Speech (English Edition)

Virtue Signaling: Essays on Darwinian Politics & Free Speech (English Edition)

  • 作者:Geoffrey Miller
  • 出版社/メーカー: Cambrian Moon
  • 発売日: 2019/09/17
  • メディア: Kindle版
 

第6エッセイ 言論の自由に関するニューロダイバーシティの擁護 その8

 
ここまで議論を進めてきたミラーはいよいよ結論を提示する.

 

結論:ニューロダイバーシティと言論の自由について何をなすべきか

 

  • キャンパスのスピーチコードはニューロマイノリティを差別している.コードは学生や教師たちの中で多くの割合を占める人々に対して非現実的な要求を行い,恐怖と(欠格者としての)烙印を押しつける.そのような人々はよくあるメンタル障害を持っていたり,ビッグ5の分布の端っこに位置していたり,睡眠障害などによる一時的抑制障害状態にあるだけなのだ.
  • (現行のスピーチコードにおいて)実際にアスペルガーやADHDなどの障害を持つ人々がどんなスピーチが許されるのかを100%正確に判断するのは不可能だ.
  • いずれこの問題に対する法的な対処法についても考察していくつもりだ.
  • 現時点では,以下のことについて考えてほしい
  • キャンパスのスピーチ規範は普通と少し異なる脳機能を持つ大学人の頭上に吊り下げられているダモクレスの剣のようなものなのだ.我々はその鋭さと重みを毎日感じている.講義を行ったり,ミーティングをこなしたり,ブログやツイートに書き込むたびに,我々は全く予測可能性がなくアンフェアなモラル的激怒,公的な辱め,魔女狩り,異端審問に対して身構えざるを得ない.
  • ちょうど過去の世界か別の文化圏からの訪問者のように,我々は自分の言動があなた方のオバートンウィンドウ内で許されているかどうか,どの言葉があなた方の耳に受け入れ可能かを理解することができない.
  • 我々はあなた方のモラル的タブーを理解できない.
  • 我々はあなた方のダブルスタンダードと論理的非一貫性を意味あるものと受け取ることができない.
  • 我々はあなた方の「共感志向は常にシステム志向より優先するべきだ」という前提をリスペクトできない.
  • それでも我々はあなた方が,我々が制御できない問題で我々を痛めつけることができる権力を持っていることを知っている.
  • だから我々は自分の考え,言動,社会的関係,評判,キャリアについて常に酷い不安に苦しめられている.

 

  • そのような時代は終わりだ.ニューロ多様性への擁護が始まりかけている.メンタル障害やエキセントリックなパーソナリティを持つ人々にも人権はある.そして我々はあなた方が与える烙印や恥辱には屈しない.我々は連邦障害者法に基づく権利を主張する.我々は大学運営側にこの政策の酷い副作用を教育していく.我々はあなた方のダモクレスの剣を打ち砕き,「奇人」の旗を世界中に掲げる.
  • 何世紀もアカデミアはニューロ多様性の天国だった.どんなことでも考えて口に出せるエキセントリックな考えや言葉の避難所だったのだ.我々はこの天国を再興する.運営側はこれを止めることはできない.行動科学も知性の歴史も連邦法もリベラルの聖なる価値である「多様性と包括性」すべてが我々のサイドにあるのだ.ニューロ多様性はここにあり,我々はもはや抑圧されない.
  • もしニューロダイバージェントたちが言論の自由のために立ち上がったらキャンパスのスピーチコードはすぐになくなるだろう.そして後にそれは21世紀のアメリカのアカデミアの奇妙な徳シグナリング現象として歴史的興味の対象となるだろう.エキセントリックなことを考えて口にする自由は保障されるべきだ.エキセントリックである権利は再興されるべきだ.ニュートンはアカデミアで歓迎されるべきなのだ.

 
まさに自身アスピーであるミラーの魂の叫びだろう.
 
それにしてもアメリカのキャンパスの左派社会正義戦士(SJW)の優勢振りはすごい.バーニー・サンダースの最大の支持基盤が若者だというのは,(彼の大学教育無償化,奨学金ローン徳政令という露骨な利益誘導政策をカウントしても)なかなか日本にいると理解しにくいが,このエッセイを読んでいるとさもありなんというところだろうか.左派の政治基盤が老齢者に偏っている日本とは随分異なるようだ.