From Darwin to Derrida その14

 
生物個体内の遺伝要素間コンフリクト.まず真核生物における組換えがなぜあるのかという問題を減少原則がどのように破られているのかから説明した. 
次に遺伝要素に緑髭効果があればどうなるのかが考察される.緑髭効果は連鎖した遺伝子同盟によるただ乗りリスクを生むが,それは組換えの高さによってある程度防ぐことができる.そしてこの文脈の中で最もよくリサーチされている利己的遺伝要素が引き起こす現象であるマイオティックドライブが解説される.
 

オープンな社会とその敵

 

  • 減少原則は遺伝子座間の緑髭効果があると壊れる.緑髭効果があると遺伝子は自分と同じ遺伝子がある確率が高いチームに直接利益を与えることができる.そして前述したように pB > C であれば遺伝子はそれによってネットの利益を得る.もし(利益を与える)チームのすべての遺伝子にとってこの確率が同じならば問題はないが,遺伝子ごとにこの確率が異なると(緑髭効果によりある遺伝子が別のチームに利益を与えようとするときには通常この確率は異なる),遺伝子ごとに利益を得たり損失を被ったりする.
  • 連鎖不平衡があると小さな遺伝子同盟は公共財を蝕むことができる.しかし組換えが高いレベルにあれば(緑髭効果エージェントが利用する)ある程度一貫した連関性が壊れる.他のチームメンバーはこのような同盟が成立する前に壊すことでこれを阻止できる.
  • このような企みの中で最もよく調べられているのはマイオティックドライブ(減数分裂歪比現象)だ.よくあるのは異型接合2倍体生物でハプロタイプが自分のコピーがない接合子を殺すもので,2遺伝子座の毒と解毒剤システムによるのが典型的だ.このハプロタイプが固定していないならば,チームの他メンバーによる何か強力な対抗戦略が発動しているのに違いない.つまり連鎖していない遺伝子はこのような企みを壊すために組換えを増進するように淘汰を受ける.
  • リー(Egbert Giles Leigh, 1971)はゲノムを遺伝子達の議会と呼んだ.
  • それぞれの遺伝子は自分の利益を追うが,ある遺伝子が他の遺伝子を傷つけるなら皆でそれを押さえつけようとするのだ.分離比の歪曲や関連する現象はフェアネスからの逸脱になる.
  • 減数分裂の規則は犯されざるべきフェアプレイの規則に進化する.それはならず者から議会を守る憲法なのだ.小さな議会が少数者の陰謀に弱いのと同じように,小さく緊密に連鎖した単一染色体の生物は歪比者の餌食になりやすい.

 
ヘイグはマイオティックドライブの様々な詳細には踏み込んでいない.これに関して最も面白い本はバートとトリヴァースの本だ.冒頭の歪比遺伝要素の話で一気に引き込まれたおぼえがある.
私の書評はhttps://shorebird.hatenablog.com/entries/2006/11/27 訳書情報はhttps://shorebird.hatenablog.com/entry/20100416/1271413839