From Darwin to Derrida その177

 

第13章 意味の起源について その15

 
意味についてのヘイグの考察.「淘汰が意味を作る」ということをアプタマーの進化系統樹を例にとって説明される.

意味論的刈り込み その2

 

  • 基幹トークンから原初トークンまでのパスで生じた突然変異はTPP親和性に向けての増加傾向を示している.より高い親和性に向けての方向性のある突然変異はどのように説明できるだろうか.
  • 答えは単純だ.突然変異は親和性に関して局所的にランダムなプロセスだが,成功するパスにおける突然変異シリーズはより高い親和性に向かう.この方向性は淘汰を行う環境からもたらされるのであって,様々な親和性を持つ枝を作る突然変異生成プロセスからもたらされるのではない.

 
系統樹における成功して存続を続ける系統はランダムな変異が選別された結果生じる.成功が連続する鍵は選別にあるのだ.もはや自明なことを何度も何度も手を変え品を替え冗長に説明しているような雰囲気だが,こうまでやらないと批判者には響かない(あるいはやっても無駄かもしれないが最善を尽くせばこうなる)というところなのだろう
 

  • ハーマン・マラーはX線誘導突然変異の発見において1946年のノーベル生理医学賞を受賞したが,そのインプリケーションについてこうコメントしている.「それは突然変異形態を増殖させる特殊な力だ.そしてその多くの突然変異形態が偶然から秩序を生じさせるトリックを可能にする.そのトリックとはそれ以外ではあり得ないほどの多くの組み合わせをを可能にするというものだ」

 
このマラーの引用は冒頭の「The Darwinian and Modern Conceptions of Natural Selection」(1949)ではなくそれより20年前の「The Method of Evolution」(1929)という論文からになる.
 
https://www.jstor.org/stable/14848

 

  • 枝を刈り込むときには様々な考慮が必要になる.アプタマーは何が残されたかと何が排除されたかによって形作られる.淘汰的プロセスはうまく働かない似たようなリガンドとの連合を排除する.進化したTPPアプタマーのリガンドとの適合においては,(そのアプタマーの)多くの部位がリガンドの形態にはまるように協調して働く.
  • アプタマーのテキストはその様々な全ての効果が淘汰の対象となる.ある部位においてはそれは.リガンドの形の鋳型を作る,アプタマーを発現プラットフォームにカプリングする,他のアプタマーと相互作用するという3つの機能を持つ.
  • 自然淘汰はうまい文言を探して突然変異を試す詩人だ.そしてリボスイッチ,遺伝子,そして生物個体は生命の詩なのだ.それらは同時に多くのことを意味する.おそらくこれは進化理論における意見の相違の究極因だ.詩の解釈には多くのやり方があるのだ.

 
最後の文章はなかなか味わい深い.突然変異はでたらめに多くの語彙(超天文数的可能性)を作るが,そこから選び出す詩人の技(自然淘汰)によって素晴らしい詩(環境に見事に適応した生命体)がもたらされる.生物学者は様々にそれを解釈し,その豊かさと多様性が生物学自体を(論争とともに)豊かにするのだ.