スティーヴン・ピンカーに対する除名請願運動とその顛末

7月の上旬にアメリカ言語学会(LSA)に対して「ピンカーの言動はLSAの代表にふさわしくなく,LSAの目的からいって受け入れられないものであり,『アカデミックフェロー』や『メディアエキスパート』の地位からの除名を求める」という請願が行われるという騒動が勃発している.
このブログではピンカーの著書や講義について紹介してきており,またこのような「キャンセル・カルチャー」について,アメリカのアカデミアの雰囲気についてのルキアノフとハイトの本やミラーの徳シグナリングの本の書評も載せてきたこともあり,私も無関心ではいられない.簡単に紹介しておこう.
  

請願

docs.google.com

 
7月1日付で600名弱の署名付き公開書簡がLSA宛てに出されている.
 

  • これは言語学者のメンバーによる公開書簡であり,スティーヴン・ピンカーをLSAの『アカデミックフェロー』や『メディアエキスパート』の地位からの除名を求めるものである
  • 我々は,ピンカーの公的なアカデミックとしての行動が我々の職業的組織の代表としてふさわしくなく,LSAの公開している目的(最近公表している人種的な正義についてステートメント)からいっても受け入れられないものであると考える.LSAはこのことを公的に確認し,ピンカーから距離をとるべきだ.
  • 我々はここでピンカーの(ガーディアン誌のいう)「科学的人種差別主義」への接近やデイヴィッド・ブルックスへの支援やジェフリー・エプスタインについての証言を問題にするつもりはない.またピンカーの言語学,認知科学,心理学についての貢献について議論するつもりもない.我々が問題にするのは,ピンカーの最近の言動が,人種差別や性差別に苦しむ人々の声やこのような差別を生みだすシステムについての抗議の声を抑えるような傾向を持っていることだ.以下例を示す.

 
ここから6つの例が示されている.
このうち4つは2014年から2017年にかけてのツイートと著書の中の文言であり,最後の2つはBLM運動が始まった後の今年6月のツイートになっている.
 

請願で指摘されたピンカーのコメントとその背景.

請願者達が指摘するピンカーの言動はどういうものか.請願書とそれを分析したいくつかの記事(ピンカー支援者から最もよく読まれているのはジェリー・コインによるブログ記事のようだ)を参考に簡単にまとめると以下のようになる.
 
whyevolutionistrue.com

 

(1)2015年のツイート

 

  • これはニューヨークタイムズの記事を引用し,「データ:警察は黒人を不釣り合いに多く撃っているわけではない.問題は人種ではなく警察の銃撃なのだ」としたもの.
  • 請願:引用された記事には「データは明白だ.警察の銃撃は人種問題だ,アフリカ系アメリカ人は不釣り合いに多く撃たれている」という文言がある.ピンカー博士は警察の暴力についてのシステマティックな人種差別から目をそらさせようとしている.
  • コインによると,しかしピンカーのコメントはこの記事全体についての適切な要約だということになる.記事の冒頭には確かに請願による引用文があるが,その後「しかしこのデータは偏見を持つ警察官がより多く黒人を撃っていることを証明しているわけではない」と続く.そしてデータを警察官との遭遇機会の多寡でコントロールすると警察官が特に黒人を多く撃っているという結論にはならないというのが記事の概要になる.
  • コインは,請願者こそが不誠実な引用マイニングの罪を負うべきだとコメントしている.

  

(2)2017年のツイート

 

  • これはやはりニューヨークタイムズの記事を引用しており,「警察は黒人も白人も人を殺しすぎている.人種にフォーカスするのは問題解決から逸れてしまうことになる.これは航空機の安全と同じような問題なのだ」という内容になっている.
  • 請願:これは警察による人々の死亡が問題になっていた時期であり,ピンカー博士のツイートはその死亡が不釣り合いなほど黒人に多いことへの関心をそらそうとしているものであり,「すべての人種が問題だ」とか「どちらのサイドも」のような論理を用いることにより人種差別から焦点をそらそうとするものだ.
  • コインによると,確かにBLM運動が吹き荒れる現在の文脈で見るとこのツイートは2017年当時より「悪く」感じられる部分があるそうだ.しかしコインはこの引用元の記事は警察の人種差別の問題を扱ったものではなく,警察の改善一般についての記事だということを指摘する.またピンカーとメールとやりとりして,このツイートについてのピンカーの言い分も紹介している.それによると「このツイートは『すべての人種が問題だ』などのような比喩的スローガンではなく,問題解決のための事実の確認やアイデアの交換という文脈でなされた表現であり,人種差別を過小に扱うことを意図したものではない.警察がアフリカ系アメリカ人を(人口比から見て)不釣り合いに多く殺しているという事実はあるが,遭遇機会の多寡をコントロールしても不釣り合いに多く殺しているという証拠はない.このことは人種問題を過小に見ているのではなく,その効果を指摘するものだ.そしてそれは問題解決のために何が有効かを知るために役立つのだ」ということになる.

 

(3)「The Better Angels of Our Nature(邦題:暴力の人類史)」における用語

 

  • 請願:ピンカー博士は「The Better Angels of Our Nature」において,ニューヨークの地下鉄で1984年に4人の強盗を撃ち殺して当時民衆間で英雄視されたバーナード・ゲッツを「物腰の柔らかなエンジニア」と形容している.撃ち殺されたのは「5ドルくれ」と言ってきた4人の黒人のティーンエイジャーだった.しかしこの「物腰の柔らかなエンジニア」は近所の人によると18ヶ月前に「The only way we’re going to clean up this street is to get rid of the sp*cs and n*****s」といっていたそうだ.彼の用語法はこの(人種差別を背景にした)真の暴力を軽視させようとするものだ.
  • コインはピンカーともやりとりし,この本の問題になった箇所の前後を引用しつつ,この部分は,映画「ジョーカー」*1で表現されたような当時のニューヨークの雰囲気を説明しようとするものであり,ゲッツの暴力を擁護しようとしているものでないことは明らかであるし,そもそもこのゲッツに対する「物腰の柔らかな」という形容は1985年のワシントンポストなどにも見られるものだと指摘している.

 

(4)2014年のツイート

 

  • これは人種差別ではなく性差別関連の糾弾になる.引用記事が消えていてやや背景がわかりにくい.ツイートは「UCSB殺人は女性に対する憎悪のパターンの一部だという主張は統計的に鈍い(statistically obtuse:「統計的なセンスがない主張だ」というほどの意味だろうか)」というものになる.
  • 請願:UCサンタバーバラで女性を6人殺害した学生は犯行直前に女性嫌悪的理由を動画サイトに投稿している.ピンカー博士はこの犯人自身のヘイトスピーチを無視して犯罪が性差別的なパターンであることを統計的に鈍いとしている.これも彼が実際の暴力を軽視する姿勢を示すものだ.
  • コインはまずこのUCSBの殺人は女性6人殺しではなく,男性4人と女性2人であったことを指摘する.ただし犯人が女性に振られたことの復讐だという趣旨をyoutubeに投稿していたのも事実だそうだ.(これだけから見ると,女性嫌悪を示す犯人の投稿があったとしても,男性4人と女性2人を殺したことは女性への復讐の犯罪とするには統計的には無理筋という趣旨にも思えるが)コインは引用元が消えていることも合わせピンカーに趣旨を確認している.ピンカーはこのツイートの背景については思い出せないと断りながら,「当時マスメディアが衝撃的な銃撃事件や自殺テロを大きく扇情的に取り扱うのは,統計的に鈍感で,読者の利用可能性バイアスを考えると政治的にも有害と考えていた.だから,可能性としては元記事は夫や恋人から殺される女性の数が減少しているという内容だったかもしれない」と答えている.*2
  • コインは,(請願者はそもそもstatistically obtuseの意味すらわかっていないのではないかと皮肉ったあと)請願者はピンカーの一般的な問題についてのコメント(ある犯罪が女性嫌悪犯罪かどうかを統計的に考えた場合どうか)を「ピンカーが女性嫌悪主義者だ」と読めると強弁するものだとコメントしている.

 

(5)2020年6月3日(BLM運動が盛んになったあと)のツイート

 

  • ツイートはハーバードの社会科学者ローレンス・ボボのハバードガゼット誌の対談記事を引用して「私はUSの人種差別の減少に関してボボのリサーチを引用した.ここで彼は黒人への警察暴力という文脈の中で人種問題について考察している」というもの
  • 請願:BLM運動が燃えさかっている6月に,ピンカー博士は彼の(人種差別)過小評価アジェンダに進めるため黒人の社会科学者ボボを取り込む(co-opt)ようなツイートを行った.ピンカー博士は,抗議が変化をもたらすと感じているボボの仕事を歪めて伝えたのだ.この翌日にLSAはツイッターで「学会は黒人コミュニティとともに立つ」と明言している.
  • コインはまず単に引用したことを取り込む(co-opt)と表現する請願者にあきれている.そしてこの引用元はアメリカの白人の間の人種差別が減少傾向にあるという内容だ.だからどこにも歪めて伝えているという事実はない.そしてコインはボボのこの対談記事を読めばボボがピンカーと同じように考えていることは明白だと詳しくコメントしている.

 

(6)2020年6月14日の2つのツイート

 

  • 請願:さらに6月14日にピンカー博士はツイートで「urban crime/violence」という言葉を用いて犬笛を吹いた(dogwhistle:わかる人にだけわかるように隠語を使うという意味).著名な言語学者であるヘンダーソンとマククレディによると「urban」には「黒人は下等でしばしば犯罪者だ」という否定的な犬笛的意味がある.
  • コインはこうコメントしている:うーむ.しかしシャーキーもブルンソンも確かにurban crimeの専門家だ.もしそこに犬笛的な意味があるならシャーキーとブルンソンこそ責められるべきことになる.
  • その他のいくつかの記事を読むと,基本的に「urban crime」というのは社会科学,政治学,法学,犯罪学で用いる「都市内の犯罪」を意味するごく普通の用語であり,数多くの書物にもその用例があり,これを犬笛と決めつける理由も根拠もないということのようだ.



こう見ていくとわかるのはこの請願が(人を糾弾するという重大な内容であるにもかかわらず,そして現代の啓蒙主義の擁護者でありリベラルであることが明白な著名な学者をこともあろうに人種差別主義者かつ性差別主義者であると貶めるという衝撃的な内容であるにもかかわらず)極めてスロッピーに作られているということだ.

  • (1)(2)は引用元の記事の要旨をツイートしているに過ぎない.特に(1)については請願者が引用元の記事の修辞的な文言が理解できるほども読み込んでいないことが明らかだ.
  • (3)(6)はピンカーの用語使用の意図を(しっかりとした根拠もなく)勝手に決めつけているだけのように見える.(そして(2)もピンカーがこのツイートを「All Lives Matter」というスローガンとして使ったのだという勝手な決めつけになっている)
  • (4)においては文脈上極めて重要に思える殺人事件の被害者たちの性別を間違えている.あるいは意図的に歪めていると疑われても仕方がない状況だし,少なくともその確認すらしていない*3
  • (5)に至っては単に「ピンカーが人種差別主義者であるのに黒人のリサーチを引用しているのはけしからん」と勝手に思い込んでいるだけにしか思えない.
  • さらに別の複数のネット記事によると当初この請願書への署名者にはピンカーと共著論文を出したこともある著名な言語学者であるレイ・ジャッケンドフも名を連ねていたが,本人は署名しておらず,なんらかの捏造があったらしい(そのような本人が関与していない署名が少なくとももう1名確認されているそうだ)*4

要するにウルトラ左翼から見ると癇に障るツイートがあったので,追放してやろうとして雑に作った請願という感じの代物のように感じられる.
またこの請願の基本的なスタンスは「彼がこのようなことをするのは,こういう意図を持っているからに違いない」という(明確な根拠のない単なる思い込みベースの)決めつけであり,もしこのロジックによる排除が許されるなら,(アカデミアで支配的なウルトラ左翼イデオロギー的スタンスからみて)気に入らない者は誰でも好きに糾弾できることを意味するだろう.特に犬笛論理が許されるならもはやどんなコメントも安全ではない.ジェフリー・ミラーは「Virture Signaling」でアスピー達の苦難を訴えたが,この請願が成立するなら,アスピーでなくともこの思想警察から誰も逃れられなくなるだろう.
 
そして最も戦慄すべきなのは,このような雑な請願にもかかわらず600名近い署名が集まったということだ(一部は捏造だとしても相当数の署名があったこと自体は間違いないのだろう).ある意味雑な請願でも十分に署名が集まるだろうという請願者の目論見が正しかったということになる.
 
これはおそらく署名を求められたアカデミアの人間にとってはこのような誰かを人種差別主義者だと糾弾する内容に署名するのは「自分が主流のイデオロギー部族の一員である」ことを示すあまりコストのかからない格好の「Virture Signaling」であり,極めてスロッピーに署名してしまうからなのだろう.
 
本件については日本語の情報もいろいろ出ているようだ.詳しいものにはDavitRiceさんのブログ記事,optical_frogさんのブログ記事(この記事は特に(4)のフェミニズム関連の部分を取り扱っている)がある.
 
davitrice.hatenadiary.jp
flipoutcircuits.blogspot.com

 
 
 

その後の顛末

 

LSAの対応

 
LSAは請願を受領後,数日かけて検討した結果これを却下した.(以下はLSAからピンカーに宛てた公開書簡)
 
mailchi.mp
 
(7/15追記)
複数の方々からLSAはまだ請願を却下していないのではないかとご指摘いただいた.確かにこの公開書簡では正式に請願を却下するとは言っていない.ただ書簡を読むと,学会の知的自由へのコミットメントを確認し,メンバーの意見表明をコントロールすることは学会の役割ではないと明言している.これは請願を取り上げて除名するようなことは考えていませんよという風に読むのが普通だと思う.もっとも表現としては「事実上取り上げないことにした」ぐらいにしておいた方が良かったかもしれない.
なお書簡の後半でタスクフォースを立ち上げることが書かれている.フェローなどの選出に関する公正で透明な指名・選出方法,およびSNS等による意見表明に関する公正で透明なポリシーを検討し,その結果を次の大会(例年1月)で報告するという内容だ.これも,今後のこのような請願に備えた対応をするという意味で,ピンカーの査問委員会を開いて半年もかけて請願を受理すべきか検討する趣旨ではないというのが私の解釈になる.
 
なおピンカー自身もLSAからの書簡を事実上の却下の表明と受け取ってこうツイートしている.

(追記は以上) 

 

ハーパーズの公開書簡

 
またこれと前後して7月7日にはハーパーズのオンラインマガジンに「A Letter on Justice and Open Debate:正義とオープンディベートについての書簡」が公開されている.これにはノーム・チョムスキー,ニコラス・クリスタスキ,ジョナサン・ハイトを含む多くの学者,著名人が署名している(ピンカーも署名に名を連ねている).特にピンカーへの請願について触れているわけではないが,文脈から見て基本的にこの請願への対処が視野にあるものだと思われる.
 
harpers.org

 
書簡の内容は以下のようなものだ.

  • 我々の文化的組織は試練の時を迎えている.
  • 現在,人種的および社会的正義についての力強い抗議運動が,警察改革,さらにより大きな平等とインクルージョンを要求している.しかしこの動きは同時に新しいモラル的態度と政治的コミットメントのセットを強化しており,これはイデオロギーの統一と引き替えに,我々のオープンディベートと意見の相違についての寛容さの規律を弱めている.
  • 我々は前者の動きを歓迎する一方,後者の動きについては反対の声を上げる.
  • 反リベラルの力は世界中で強まり,民主主義への真の脅威であるドナルド・トランプと強固な同盟を築きつつある.しかしこれに対して(右翼のデマゴーグ達が行っているように)自分たちのドグマのブランドを強固にすることや強制によって対抗すべきではない.我々が望む民主主義インクルージョンは広がりつつある不寛容な雰囲気に対して声を上げることにより得られるのだ

 

  • 情報やアイデアの自由な交換はリベラルな社会の血液ともいうべきものだが,日々制限されるようになっている.検閲が(これはこれまで極右のすることだと思われてきたが)我々の文化に広がっているのだ.反対する見解への不寛容,公開の辱めや追放の流行,そして複雑な政策問題を目くらましのモラルで一刀両断しようとする傾向が強まっている.
  • 我々はすべての問題についてロバストで手厳しい反対論とのディベートの価値を支持する.しかし現在主流から外れたと感じられる言論や思想に対しての素速く厳しい報復行動があまりにも増えている.さらに問題なのはダメージコントロールにパニクった組織リーダーが熟慮の上の改革ではなく,拙速に不適切な罰を与えてしまうことだ.論争を巻き起こした編集者は解雇され,書物は非正統的と批判されて排斥される.ジャーナリスト達は特定項目について書くことを禁止され,教授達は授業での文学作品の引用について審問を受ける.リサーチャーは査読済み論文を流布したとして解雇され,組織トップは単なるつまらないミスで追放される.それぞれの議論がどうであれ,結果としては報復の脅威なしに行えることの範囲は狭まっている.
  • 我々は,異論を持つことや賛意が十分でないと判断されることの報復に怯えるライター,芸術家,ジャーナリスト達のリスク回避行動により既に大きな代償を支払っている.

 

  • このようなとげとげしい雰囲気は最終的には我々の時代の最も重要な目的をも害するだろう.政府の抑圧によるものであろうが,不寛容な社会によるものであろうが,ディベートの制限は権力を持たないものにとって最も不利に働き,すべての人にとって民主政治に参加することをより難しくする.
  • 悪いアイデアを駆逐する方法は,公開し議論し説得することによるべきであり,黙らせたり追放することによるべきでない.我々は,正義か自由かという間違った二者択一を拒否する.正義も自由も両方なければどちらも成立しない.
  • 書き手として,我々には実験,リスクテイキング,そして誤りの余地を残す文化が必要だ.我々は,重大な職業的リスクなしに誠実な非合意が生じる可能性を許容すべきだ.もし我々が自分たちの仕事がよってたっているそのような寛容を自ら擁護できないなら.大衆や政府がそれを擁護してくれるはずがないのだ.

 

ということで,ひとまずピンカーへの除名請願は却下されてこの騒動は一段落した.しかしこの影響はさらに残るかもしれない.確かにピンカーは守られた.それはピンカーがあまりにも著名なリベラリストで,人種問題をおろそかに考えていないことは明らかで,チョムスキーやハイトがすぐに擁護に立ち上がったからだ(そしてこの請願があまりにも雑だったからということもあるだろう).この騒動(特にこんな雑な請願に多数の署名が集まったこと)を見た普通のアカデミアの人間にはやはり萎縮効果が強まることが懸念される.
 
そうした文脈ではこのハーパーズ書簡は非常に重要だと思われる.問題を解決することにより良い社会を構築することをめざすのであれば,右であれ左であれ,偏狭なイデオロギー的正義シグナリングよりもまずは言論の自由を擁護すべきだろう.これがアメリカのアカデミアに吹き荒れる「キャンセル・カルチャー」についての転換点になるのかどうかが注目される.
 
なおこの公開書簡についてはoptical_frogさんのブログ記事に(私のより正確な)訳文が掲載されている.
flipoutcircuits.blogspot.com



関連書籍
 
ルキアノフとハイトによる最近のアメリカのアカデミーの風潮に関する本.私の書評はhttps://shorebird.hatenablog.com/entry/2019/04/04/172150

 
ミラーによる徳シグナリング本.私の書評はhttps://shorebird.hatenablog.com/entry/2020/04/29/093951

*1:「ジョーカー」では後にジョーカーになるアーサー・フレックがやはりゴッサムシティの地下鉄で3人の悪漢に絡まれて,その結果彼等を撃ち殺して一部から英雄視される状況が描かれているが,ここで撃ち殺される悪漢はウォールストリートで働く傲慢な白人になっている

*2:なおoptical_frogさんの解説記事を読むと,この消えている引用元はどうやら保守系雑誌に掲載された被害者の性別を無視して女性嫌悪犯罪と騒ぎ立てるフェミニストを批判する記事だったようだ.この記事を引用することでピンカーが一部のフェミニスト達に敵視されたということなのだろう

*3:これに関しては請願者側は後に訂正の注釈を付けている

*4:なお最新版の請願からはジャッケンドフの名は消えている